価値創造に挑戦する人材・ノウハウが少なくなっていないか?
■価値創造に挑戦する人材・ノウハウが少なくなっていないか?
既存事業が成熟し低迷に悩む企業の多くは、新製品・新事業開発の必要性を訴え、開発プロジェクトを立ち上げるのはもちろん、イントレプレナーといった社内起業制度を導入するなど様々な取り組みを行なっています。しかしながら、結果が出ないという理由でわずか2~3年で終了したり、終了しないまでも予算や時間などの投入資源を大幅に削減したりするケースが少なくありません。これでは、開発過程でせっかく獲得した経験やノウハウが蓄積も伝承もされず、人材育成につながりません。
しかし、成功するのは1000に3つと言われる新製品・新事業開発の難しさを考えたとき、人材が育成できていない中で、どうやってこれを成功させるというのでしょうか。
既存事業の収益が低迷しているのですから、結果を急ぐ気持ちはわかります。しかし、新製品・新事業開発を行うのは「人」です。その育成には一定の時間がかかることを理解しなければなりません。
このような残念な現象が起こる背景には、日本企業の多くがバブル経済崩壊後、腰を据えて新製品・新事業開発に取り組んでこなかった、という現実がありそうです。円高、リーマンショック、東日本大震災と厳しい環境が続く中で、多くの企業は事業の選択と集中を行ない、製造工場の海外移転、事業の売却、組織リストラなどを断行してきました。ただ困難を乗り越えるのに精いっぱいで、その間、新製品・新事業開発に投資する余裕がなかったという面もあるでしょう。実際、役員全員に新製品・新事業開発の経験がないという企業も少なくありません。
そういう企業・組織においては、「新しい価値」とはどうしたら創造できるのか、経営トップはじめ誰一人わかっていない、というのが現実だと思います。気づけば開発担当の部署もない、新しいことに挑戦する風土もない、指示待ちで受け身の人ばかり、とういう状況ではないでしょうか。
昨今、新卒の就職は少子化の影響で売り手市場ですから、新しい風を入れてくれる若い人材はなかなか集まりません。モチベーションが高い学生は大手企業を避け、スタートアップ企業やコンサルティング会社を選択する傾向が高まっています。さらには、学生のうちに起業する人も多くなってきました。
では、外部から経験者を採用したらどうでしょう。その場合でも、新製品・新事業開発のための人・組織基盤づくりには、最低3年は必要と考えてください。その3年間にやることは、まず組織やポジジョンの間の垣根を取り払い、従来のピラミット型組織にとらわれず、フラットでオープンな活動がやりやすい環境をつくること。そして、その中で小さなプロジェクトをできるだけ多く実施し、新事業を牽引できるリーダーや、それを支えるメンバーを発掘・選抜していきます。これを繰り返して、新しいことへの挑戦が当たり前となる環境をつくり、挑戦が評価される組織風土へと変革していくのです。詳しくは以下の通りです。
1年目:既存事業や業務の改善プロジェクトを組織横断的にモデル実施する。リーダーシップ、ファシリテーション、改善技法などを学ぶ。オープンな組織風土へ変革する。
2年目:既存事業や業務の改善プロジェクトに全員を巻き込む。活動テーマの中に、結果を問わない新技術開発・新市場開拓などを含める。
3年目(仕上げ):新事業リーダーとメンバーの発掘・育成に集中する。小さな新製品開発や新顧客開拓プロジェクトを立ち上げる。前向きな挑戦を人事評価の対象とし、それを全社で共有する。
組織風土を改善するのと並行して、経営トップは新たな事業ドメイン戦略の検討を進めなければなりません。3年が経ち、ある程度の人・組織基盤ができあがったとき、新しいドメインに向かって新製品・新事業開発がスタートできるよう戦略を構想しておく必要があります。
そして、ドメインの中の新製品・新事業開発には一定以上の期間、投資し続ける覚悟が必要です。たとえ失敗したとしても、その過程で人材が育成され、蓄積したノウハウや外部との関係という資産が散逸しないような仕組みづくりも欠かせません。その他、人材を育成する方法としては、スタートアップ、グループ企業、合弁企業への出向なども効果的でしょう。