コア技術戦略の経営はなぜ重要か
■コア技術戦略の経営はなぜ重要か
「コア技術戦略の経営」はなぜ重要かを考える際、「短期収益管理とM&A中心の経営」と比較するとよくわかるでしょう。結論から言えば、「コア技術戦略の経営」は、革新的価値の創造によって社会や市場へ貢献しているのに対し、「短期収益管理とM&A中心の経営」は、M&Aを活用した価値の移転だけにとどまり、社会や市場における貢献の度合いが低いのです。
このような価値創造に対する覚悟とスタンスの違いは、社会や市場への貢献度のみならず、組織風土、社員やパートナーの成長にも大きく影響を与えています。以下、両者の特徴を具体的に記します。
(1)「コア技術戦略の経営」とは
- 特化した技術を進化させて独自の製品・サービスを提供し、高い顧客経験価値を創出します。独自性があるだけに希少性が高く、高い利益を生み出します。
- 既存のコア技術をベースにするため、既存事業の安定は維持しつつ新市場・新ドメインでも確実な成長を実現します。企業・組織にとって安定性と革新性のバランスをとった戦略と言えます。
- 企業・組織内部に成長の種とメカニズムをつくる、すなわち内部成長のDNAを生み出します。成長の根源をM&Aなど外部に依存しすぎると、組織は守りに入り、成長能力は減退します。
- 成長するために事業機会を求めて活動します。自社のコア技術を新たなドメイン・新たな市場の視点から見ることで、どのような事業機会があるか気づくことができるからです。
- コア技術を重視するため、ベテラン社員が尊重されると同時に若手も育成しやすく、コミュニティとして安定成長が期待できます。
- 会社・組織として進むべき方向・領域と成長の方針が明確です。このことは優秀な人材や外部パートナー企業など人的経営資源の獲得において有利に働きます。また、パートナー等との関係を築いた後も効果的なコラボレーションが期待できます。
(2)「短期収益管理とM&A中心の経営」とは
- 社員にとって自由度の低い「管理」が中心で、自発的なアイデア、発想は生まれにくい組織になる可能性があります。
- 短期業績は維持できるものの、内部成長性は低下し、成長が鈍化する可能性があります。
- その結果、成長を外部に求めるようになるので、成長戦略のM&Aへの依存度が高まります。開発や製造、マーケティング、営業などの現場よりも本社機能が強くなり、官僚的組織となって、成長の種を含む現場の声がますます本社へ届きにくくなります。
- 組織改編、リストラ、M&Aなどが増えることで、組織コミュニティとして不安定になりがちです。
- 創造性の高い社員は入社を避け、現状維持型の官僚的な人材の比率が増えます。個性的、独創的な社員の退職が増える可能性があります。
- 下請け的なパートナー企業が多くなり、独創性の高いスタートアップ企業、海外企業などとの関係が希薄になります。

このように比べてみると、コア技術戦略の経営とは、社員から生み出される知識や知恵をベースにした「自己成長」が前提の経営だということがわかるでしょう。もちろん、競合の成長スピードが加速化する現代では、外部経営資源を素早く手に入れる手段としてM&Aも必要です。しかし、そうやって外部経営資源を獲得したところで、自分たちに自己成長する力がなければ、買収先企業の経営資産を足し算しただけに終わり、真の意味での成長は達成できません。