技術者にとって市場調査とは何か ―顧客経験価値・革新的価値を検証する
■市場調査とは顧客経験価値・革新的価値の検証である
皆さんご自身が今、開発している技術・製品の顧客経験価値および革新的価値は、明確に定義づけられていますか? その定義は、市場・顧客によって検証されたものでしょうか?
あなたが技術者であれば、競合他社を意識して革新的技術を開発し、製品化・事業化を目指すことは当然ですが、それ以前にもっと大切なことがあります。それは、顧客をはじめ、事業に関わる多くのステークホールダーに対して、独自の高い価値を創造し提供することです。そのためには、まずその価値を創造し、明確に定義しなければなりません。
本コラムでは、その価値を「顧客経験価値」「革新的価値」といった言葉で表現しています。これらの価値を定義することこそがもっとも重要であり、「技術」とはその価値を実現する重要な手段なのです。
モノが不足していたかつての工業化時代・大量生産の時代には、これから必要となるだろう製品・サービスを誰でも予めイメージできましたので、そのための技術を開発すれば、製品も事業も比較的簡単に生み出すことができました。しかし、近年のように、モノもサービスも飽和してしまっている時代には、モノやサービスそのものの前に、これまで全く存在しなかった顧客経験価値を考え出し、その可能性を検証し、修正を加え、さらには進化させることが決定的に重要です。「技術」は、あくまでもその実現手段として考えるのです。
もちろん、新たな技術が新しい顧客経験価値・革新的価値の創造の着想につながることもありますので、技術起点での発想を完全に否定はしません。しかし、その場合であっても、顧客経験価値・革新的価値は明確に定義され、検証されていなければなりません。
その検証に必要なのが市場調査です。市場調査というと、まずは市場を調べてビジネスチャンスを発見する、という作業をイメージする方も多いかもしれません。それは市場・顧客の調査から始めて事業開発につなげる手法ですが、ビジネスにスピードが求められる今の時代、その順番では遅すぎます。最初に仮説を立ててから、その仮説を検証・修正し、進化させるために市場調査を行なうべきなのです。
したがって本コラムでは、技術マーケティング戦略仮説で構想した顧客経験価値・革新的価値と、それを実現する製品・サービス、エコシステム・ビジネスモデル、バリューチェーン、コア技術を検証・修正し、進化させるための重要なアクションとしての市場調査について、その手法をお伝えします。