ニューチャーネットワークス

【報告】「AIで企業システムの内製化・コストダウンはどこまでできるのか」株式会社Fireworks 江口 天氏講演 ニューチャーネットワークス主催 第7回技術者交流会を開催いたしました

2026年5月18日(月)ニューチャーネットワークス主催

「AIで企業システムの内製化・コストダウンはどこまでできるのか」株式会社Fireworks 江口 天氏講演!第7回技術者交流会

をオンラインにて開催いたしました。

今回は、株式会社Fireworks 代表取締役であり、当社アドバイザーでもある江口 天 氏を講師にお迎えし、生成AIを活用した業務システム・基幹システムの内製化の可能性についてご講演いただきました。

近年、多くの企業でDX推進やAI活用が進められている一方、実際の現場では、検索、議事録作成、チャットボット活用などにとどまり、業務プロセスやシステムそのものの変革には十分に踏み込めていないケースも少なくありません。

本交流会では、こうした課題意識を背景に、生成AIを「便利な補助ツール」としてだけでなく、企業システムの構想、仕様書作成、プロトタイプ開発、レガシーコード解析にまで活用するための考え方と実践方法を共有いたしました。

江口 天 (えぐち たかし)

株式会社Fireworks 代表取締役/ニューチャーネットワークスAI技術アドバイザー

東京大学大学院修了後、NTT研究所にて暗号アルゴリズムの研究開発に従事。ヨーロッパに渡ったのち、ドイツ及び日本のマイクロソフトにて自然言語処理エンジニアとして活動。その後、カナダのスタートアップでの日本語音声認識アプリケーション開発を経て、帰国後に株式会社MDIUを設立。現在は、国内大企業へのDXコンサルティングを主軸としながら、自然言語処理の知見を活かした「エンジニアのスキル可視化システム」の開発なども手掛けている。

 

講演では、自然言語でAIと対話しながらシステムを開発する「Vibe Coding」の考え方を中心に、業務システムおよび基幹システムへの生成AI活用の可能性について解説いただきました。

自然言語でシステムをつくる「Vibe Coding」

2022年のChatGPT登場以降、システム開発の前提は大きく変化しました。これまで、システム開発はプログラミングの専門知識を持つエンジニアや外部ベンダーに依存する領域と考えられてきましたが、現在では、日本語などの自然言語でAIに指示を出し、コード生成やエラー修正を行いながら、短期間でアプリケーションを作成できる時代になりつつあります。

江口氏からは、「Vibe Coding」とは、完璧な仕様書を最初から用意するのではなく、「こうしたい」「このようなものが欲しい」という現場の課題感や目的を起点に、AIと対話しながらシステムを形にしていく開発手法であるとご説明いただきました。

AIがコードを生成し、人間は確認、改善指示、品質判断に集中することで、従来よりも速いサイクルでプロトタイプを作成できます。また、AIへの指示では、誰が使うのか、何を作るのか、なぜ必要なのか、どのような制約があるのかを明確にすることが重要であり、5W1Hを意識した構造化プロンプトの有効性も紹介されました。

業務システム・基幹システムへの生成AI活用

講演後半では、業務システムと基幹システムの違いを整理したうえで、それぞれにおける生成AI活用の可能性が示されました。

日報、在庫管理、ワークフロー、予実管理などの業務システムは、現場の変化に応じた柔軟な改善が求められます。一方で、財務、人事、生産管理などの基幹システムは、企業活動を支える「心臓部」であり、堅牢性や一貫性が重要です。

江口氏からは、基幹システムを外部ベンダーに丸投げし、社内に知見が残らない状態は、経営上の大きなリスクになり得るとの指摘がありました。長年の改修によりブラックボックス化したシステムや、COBOL、FORTRANなどのレガシー言語で構築されたシステムについても、生成AIを活用することで、コード解析、仕様書化、次世代システム構想の検討が可能になることが紹介されました。

一方で、データ移行や基幹システムのコア部分の変更については、誤操作による重大なリスクがあるため、専門家の関与や慎重な検証が不可欠であることも強調されました。

生成AIを用いたデモンストレーション

当日は、当社からも生成AIおよびVibe Codingを活用して作成したデモアプリを紹介いたしました。

1つ目は、予実管理エージェントです。マネーフォワードの実績CSVと部署別の予算データを突合する業務において、フォーマットの違いにより毎月数時間の手作業が発生するという想定です。デモでは、2つのCSVファイルをアップロードするだけで予実差異を自動集計し、差異額や差異率を一覧表示するアプリケーションを紹介しました。

2つ目は、工場制御ダッシュボードです。1998年製のFORTRANで書かれた工場制御システムを想定し、AIを用いてコードを解析、温度・圧力制御のロジックを可視化したうえで、現代的なWebアプリケーションとして再構築する流れを紹介しました。

これらのデモを通じて、生成AIを活用することで、身近な業務の自動化からレガシーシステムの解析・再構築まで、段階的に内製化へ取り組める可能性が示されました。

質疑応答・意見交換

質疑応答では、非エンジニアがVibe Codingを行う際に必要な技術知識の範囲や、AIの進化によって専門知識がどこまで不要になるのかについて議論が行われました。

江口氏からは、AIのコード生成能力は急速に進化しているものの、基礎的な用語や開発プロセスの理解がある方がアウトプットの品質は高まりやすいとの説明がありました。一方で、すべてを一人で習得する必要はなく、社内外のアドバイザーや技術者と連携しながら進めることが現実的であることも示されました。

また、当社からは、まず仕様書を作成する段階だけでもAIを活用する意義が大きいことをお伝えしました。すべてを内製化するのではなく、「業務課題の言語化」「仕様設計」「プロトタイプ作成」を社内で担い、専門性が必要な部分は外部パートナーと連携する形が、今後ますます重要になると考えられます。

AI時代における人間の役割

まとめでは、AI時代において人間が担うべき役割についても議論が行われました。

AIは文章生成、コード生成、要約、分析を高速に行うことができます。一方で、現場で何が起きているのかを観察し、違和感に気づき、仮説を立て、実際に行動して検証することは、人間にしか担えない重要な役割です。

今回の交流会を通じて、AI活用の本質は、単に作業を効率化することではなく、人間の発想、判断、行動を拡張し、企業の変革スピードを高めることにあると再認識する機会となりました。

ニューチャーネットワークスでは、今後も技術者交流会を通じて、AI、デジタル技術、事業開発、組織変革に関する実践的な知見を共有してまいります。

 

 

← お知らせ一覧へ