技術者の顧客コミュニケーションと提案活動

仮説と顧客要求のギャップは、5つの視点で分析する

■提案結果から行なう技術マーケティング戦略仮説のギャップ分析

①技術マーケティング戦略仮説と顧客要求とのギャップ分析

提案活動を通じて自社と顧客の間では様々なことが議論されます。その内容から顕在的・潜在的な顧客の要求を見出し、自社の技術マーケティング戦略仮説と比較して、両者間のギャップを把握・分析します。

ギャップの把握は、まず仮説として顧客に提示したものが顧客の顕在的あるいは潜在的な要求と合致したかどうか、その充足度合いを分析します。仮説として提案はしなかったが顧客の顕在的要求があったのであれば、ギャップは仮説自体の不足点として認識されます。

もし顧客の要求が潜在的なものであれば、自社も顧客自身もギャップを認識できません。ただし、競合の提案によって顕在化する場合もありますので、競合の提案の可能性もヒアリングできると良いでしょう。あるいは、顧客との深いコミュニケーションを通して潜在的な要求が発見できれば、より望ましいと言えます。

ギャップのあった部分が機能や価格、一部の間接コストであれば、数値で表しやすいため定量的に把握できますが、それ以外は定性的になることがほとんどです。しかし、技術マーケティング戦略仮説の中の重要な要素、つまり売上やシェアなど業績に関わるものは可能な限り定量的に分析する必要があるため、提案そのものをできる限り定量的に示すことが大切です。

また、複数の顧客に提案した場合、結果にばらつきが出ることがあります。その場合は、提案結果全体を把握した上で、ターゲット顧客の中でも最も影響力の高い顧客の意見を重視します。

5つの仮説と顧客要求を対比し、技術マーケティング戦略仮説のギャップ分析を示した図

技術マーケティング戦略仮説のギャップ分析

②顧客経験価値のギャップ分析

ギャップ分析で最初に行なうのが、顧客経験価値のギャップ分析です。自社が想定した製品・サービス仮説とそれが生み出す顧客経験価値仮説に対して、顧客がどのように感じたか、顧客が要求するものとどれだけ乖離があったかを把握します。

顧客経験価値とは、すなわちコストに対するベネフィットですから、ベネフィットについては、理念、戦略ベネフィット、プロセスベネフィット、機能的ベネフィット、それぞれの仮説と顧客の要求とのギャップを把握します。

コストについては、直接的なコスト(提示価格)および顧客が負担する間接コストに関する仮説と顧客の要求とのギャップを把握します。

BtoC、つまり消費財の場合は、ベネフィットは機能的ベネフィットおよび感覚・感情・行動・思考・共感のベネフィットを指します。コストは、直接コストつまり価格と、顧客が負担する感覚・感情・思考・行動・共感などの経験コストを意味します。

③製品・サービスのギャップ分析

製品・サービスのギャップ分析とは、「製品・サービスの基本機能」「付加機能」「製品・サービスプラットフォーム」「コラボ他社製品・サービス」「提供形態、販売方法、ユーザーインタフェース」といった製品・サービスの中核となる基本要件が、顧客の要求と合致しているかを比較することです。

実際は製品・サービスの仮説に対して顧客要求が明確に示され、把握できるとは限りません。顧客経験価値に関するギャップから推測する部分もでてくると思われます。

④バリューチェーンのギャップ分析

バリューチェーンについては、求められる製品・サービスの品質とコストを実現するために必要なプロセスが欠けていないか、プロセスが競合よりも劣っていないか、顧客のプロセスとの重複など無駄がないか、といった点に関するギャップを分析します。

提案側がメーカーの場合は、顧客によっては、納期対応、物流、顧客業務プロセスの代行など、バリューチェーン上のギャップが発生することがありますので、注意しなければなりません。

⑤エコシステム・ビジネスモデルのギャップ分析

エコシステム・ビジネスモデルのギャップ分析とは、他社との協業も含めた顧客経験価値を生み出す仕組み全体でのギャップを指します。自社の提案するエコシステム・ビジネスモデル仮説が、顧客の要求する顧客経験価値を生み出せているか否かを把握します。

具体的にはエコシステム・ビジネスモデルについて、求められている顧客経験価値を実現するために必要な要素とそのためのプレイヤーが欠けていないか、顧客との関係性や結びつきが適切か、といった点に関するギャップを分析します。

⑥コア技術のギャップ分析

次にコア技術のギャップ分析を行ないますが、コア技術に関しては専門知識が必要であるため、顧客から直接ギャップの存在を聞き出すことは難しいかもしれません。そのため、コア技術のギャップ分析は、それまでに実施した顧客経験価値、製品・サービス、エコシステム・ビジネスモデル、バリューチェーンの各視点におけるギャップ分析の結果から、コア技術に対する要求項目とその水準を推定することで実施します。

要素技術や設計技術であれば、顧客経験価値や製品・サービスと、生産技術であればバリューチェーンと、利用技術であればエコシステム・ビジネスモデルと関係が深いと考えられます。

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