技術マーケティング戦略仮説を発想する

マーケッターは技術を知る人が務め仮説推論を立てる

■技術をよく知る者がマーケッターとなれ

従来の技術主導型企業では、技術開発→製造準備→量産試作まで終わらせてから製品・サービスのマーケティング戦略立案に取り掛かるのが一般的でした。しかし、これだけ技術開発のスピードが上がってくると、そのやり方は全く通用しません。

このことは、市場を寡占し安定的な地位を得ることが命題だった大量生産型企業の時代から、社会・産業の変化をリードするスタートアップ型企業の時代への移行を象徴していると言えます。

こうした技術ベースのスタートアップ企業では当然ながら、技術者である社長はじめ技術をよく知る人がマーケッターの役割を担っています。が、そのような布陣はなにもスタートアップ企業の専売特許ではありません。

伝統的な大企業であっても、マーケッターは自社の技術をよく知る人、つまり研究担当、開発設計担当、製造技術担当などの技術者、もしくは営業やマーケティング部門に所属していても技術に明るい人が務めるべきです。

■仮説推論を立てられるかどうかが勝負

■戦略企画には「推論」=「思い」×「事実」が必須

技術開発に着手するタイミングで技術マーケティング戦略の企画を開始すべきと述べましたが、いざやろうとすると、

・様々な技術の中からどれをコア技術として特定すべきか?
・コア技術の開発の方向性は?
・対象市場、顧客はどこか?ニーズはあるのか?

など、わからないことだらけになってしまう不安を感じるかもしれません。

マーケティング戦略の知識やスキルを一通り学んでから、市場情報の収集や分析を行なうのも悪くはありませんが、それでは時間がかかりますし、実践的でもありません。実際のテーマを題材に、実践しながら知識やスキルを身に着けていくほうが効果的です。

戦略の先が見えない不安から、自分の思いと知りうる事実による仮説推論から始める流れを示した図

先が見えない時こそ仮説推論が重要

そこで重要なのが「仮説推論(アブダクション)」です。

仮説推論とは、主観を含む観察された事実から最も適切な仮説を導き出すものです。演繹法や帰納法と異なり、不完全な情報から最も可能性の高い仮説を見つけ出す方法で、変化のスピードが速く変動性の高い複雑な状況下では特に有効です。

技術マーケティング戦略が扱う対象である技術・顧客・市場は、常に変化しており極めて複雑です。そこでは、根拠となる客観的事実を集めて分析し答えを導き出す帰納法や、一般的な法則や原理原則をあてはめて答えを導く演繹法は、あまり効果がありません。代わりに仮説推論とその検証が大変有効なのです。

技術マーケティング戦略における仮説推論とは、簡単に言えば、技術や顧客経験価値に関する「自分たちの思い」と「観察された事実」との掛け算です。

「自分たちの思い」を引き出すには、対象技術に愛着を持っていることは大前提として、顧客の喜びを想像してみることもたいへん有効です。また、対象技術の社会的使命、パーパスなどから発想するのもよいでしょう。

もう一つの「観察された事実」とは、「自分たちの思い」を念頭に置きつつも、より広い視野で顧客や顧客を取り巻く環境、産業・社会全体を観察して得られたものでなければなりません。行動力、人的ネットワーク、情報収集力、そして高い問題意識が必要とされます。

こうしてつくった仮説推論は、初めは多少貧弱に思えるかもしれません。それでもまずは勇気をもってアイデアを開示し、様々なイメージを膨らませてみることが大事です。仮説推論の議論は、一人でやるよりも多様なメンバーを集めて行なうほうが効果が高くなります。

仮説推論を、自分たちの思いと観察された事実の掛け算として定義した考え方を示した図

仮説推論とは

← コラム一覧へ