■バリューチェーン仮説
前回エコシステム・ビジネスモデルとの対比で説明したとおり、バリューチェーンとは、製品・サービスを作り出す自社内のプロセスおよび自社が管理する(他社を含めた)一連のプロセスです。製品・サービスを生み出す直接的なプロセスである「主活動」と、間接的なプロセスである「支援活動」に分けられます。
バリューチェーン仮説を構想する際の視点は次の3つです。
①バリューチェーンの範囲の特定
②プロセスの内製、外製の割り振り
③バリューチェーン上の特色、強みの明確化
技術マーケティング戦略の観点では、バリューチェーン上の強み・特徴とはコア技術そのものを指します。また、バリューチェーンに強みがあれば、それを支える支援活動も充実しているはずです。
バリューチェーンは、同業であれば類似しているはずですから定量的な競合ベンチマーク比較が可能です。自社はどのプロセスが強い/弱いのか、弱いプロセスはアウトソーシングできないか、外部も含めてバリューチェーントータルで高い顧客経験価値を作り出し、競合と差別化できないか、などを仮説として構想します。

バリューチェーンの基本構造と構想の視点
■コア技術仮説
コア技術とは以前のコラムで解説したとおり、製品・サービスそのものだけでなく、バリューチェーン、エコシステム・ビジネスモデル、そして顧客経験価値の競争力を支える中核であり、再現性のある独自の専門知識やスキルを指します。
「技術」は、大まかに「要素技術」「設計技術」「製造技術」「利用技術」に分かれます。(「技術」と「科学」、「技能・スキル」との違いは、以前のコラムをご覧ください。)

「技術」の範囲とカテゴリー
コア技術仮説を考える際は、自社のコア技術が上記のような技術のカテゴリーの中のどこに存在するのか、具体的にどのような技術であるかを明確にする必要があります。
多くの企業では、コア技術をあらかじめ戦略的に特定し、自社内で共有しています。例えば、「要素技術×設計技術×製造技術×利用技術」といった特定の技術プラットフォームをつくり、開発から設計、生産まで一気通貫した技術戦略基盤としている企業も少なくありません。こうした技術プラットフォームは、それを利用することで新しい製品やサービスを効率的につくることが可能になるだけでなく、顧客やパートナー企業を巻き込んだビジネスモデルのベースにもなりますので、重要な考え方と言えます。

技術プラットフォームのイメージ
では、具体的にコア技術仮説はどのように企画構想されるべきでしょうか。以前のコラムでも一部ご紹介した内容ですが、ここで今いちど整理します。
①コア技術候補のリストアップ
技術マーケティング戦略仮説の顧客経験価値、製品・サービス、ビジネスモデル、バリューチェーンの各仮説から、関連すると考えられる既存技術をリストアップします。既存技術の中には前に述べた技術プラットフォームが活用されていればより強みが発揮できると思います。
②コア技術戦略の7つの要件を活用したコア技術の企画構想
そのコア技術候補を以前のコラムで紹介したコア技術戦略の7つの要件にこたえるようにして新たなコア技術を企画構想します。その際7つの要件に完全にこたえられなくてもよいと考えて下さい。

コア技術仮説
③4象限によるコア技術の発想を試みる
コア技術戦略の7つの要件を意識して4象限によるコア技術の発想を試みてください。この際少し社内外の調査探索が必要かもしれません。特に社外の技術は探索が必要の場合が多いと思います。
④ボトムアップ&トップダウンで対話を繰り返す
技術マーケティング戦略プロジェクトのメンバーが企画したコア技術構想をプロジェクトのスポンサーである経営トップに提案し、ボトムアップ&トップダウンで何度か対話を繰り返し、コア技術仮説をまとめていきます。
コア技術仮説も、顧客経験価値、ビジネスモデルなど他の技術マーケティング戦略の要素同様に、この段階では不完全であっても、技術レベルが現状と比較して大きなギャップがあっても構いません。この段階ではあくまでも仮説ですから、検証作業や実際の開発作業で確かなものにしていければ良いと考えてください。