技術マーケティング戦略仮説を発想する

エコシステム・ビジネスモデル仮説は5つの視点で構想する

■エコシステム・ビジネスモデル仮説

インターネットはもちろん近年のAIの普及によって、ビジネスにおける他者との関係性は極めて重要になってきています。従って、技術マーケティング戦略においても、エコシステム・ビジネスモデルといった他社との関係に関する戦略がとても重要です。

これまでも触れてきましたが、ここであらためてエコシステム・ビジネスモデルとは何か、バリューチェーンも含めた形で解説します。

バリューチェーンとは、製品・サービスを作り出す自社内のプロセスおよび自社が管理する(他社を含めた)一連のプロセスを意味します。例を挙げれば、家電の開発・製造から販売までの従来のビジネスの流れがバリューチェーンに相当します。

これに対してビジネスモデルとは、バリューチェーンよりも広い概念であり、戦略的に他社と連携してつくりあげた、競合と比べて有利なビジネス構造のことを意味します。家電メーカーを例にとると、楽天やアマゾンなどのECサイトプラットフォーマーが家電販売に参入したことで、販売や顧客サポート、情報発信の方法が大きく変化しました。このような従来のバリューチェーンの外にある他社も含めて、組みあがったビジネスの構造がビジネスモデルです。このモデルの中で連携する他社とは通常、何らかの契約関係が存在することが前提ですので、システムとしては安定していると言えます。

エコシステム、ビジネスモデル、バリューチェーンの範囲の違いと関係を、家電の例で示した図

エコシステム、ビジネスモデル、バリューチェーンの関係

エコシステムはさらに範囲が拡大します。同じ例で言うと、家電販売のビジネスモデルの中にGoogleなどの検索エンジンやOpenAIなどの生成AIプラットフォーマーが参入してきて、顧客の家電選択に影響を与えるようになったため、家電メーカー自体が生成AIの機能を取り込むなどして、それらプラットフォーマーなどとの新たな関係性が出来上がっていく、といったイメージです。

エコシステムの中の他社とは、契約関係がなくても事実上は連携・連動しているという状態なので、このシステムは必ずしも安定的ではなく、流動的と言えます。

繰り返しますが、技術マーケティング戦略において、エコシステム・ビジネスモデルといった他社との関係に関する戦略はとても重要です。自社のコア技術やコアコンピタンスへ自動的にフィードバックがかかるビジネスの仕組み・構造をつくってしまえば、ビジネスは指数関数的に成長するからです。

本コラムではここまで「エコシステム・ビジネスモデル」とひとまとめに表現してきたとおり、技術マーケティング戦略における仮説の構想視点はどちらも同じと考えて構いません。ここではビジネスモデルに絞って、その基本構造と仮説を構想する際の視点を紹介します。

ビジネスモデルの基本構造と、仮説を構想する際に押さえる5つの視点を整理して示した図

ビジネスモデルの基本構造と構想の視点

視点①:顧客経験価値

ビジネスモデルもエコシステムも顧客経験価値が最終的な成果です。顧客経験価値は、自社製品・サービスのみならず、他社の製品・サービスとの連携によって作り出されます。既に見てきた技術マーケティング戦略の5つの要素の一つである「顧客経験価値仮説」を、ビジネスモデルの観点から見直します。

視点②:コア技術

同じく技術マーケティング戦略の要素の一つである「コア技術仮説」をビジネスモデルの観点から確認します。コア技術が製品サービスの基本機能を担っているか、その機能レベルは高いものか、他社コラボ製品・サービスと連携しやすいかなどを確認します。

視点③:プラットフォーム

技術プラットフォーム、製品・サービスプラットフォームなど、「プラットフォーム」という言葉がこれまで何度か出てきていますが、これは「顧客や他社が利用しやすい共通基盤」を意味します。ここでは、技術プラットフォーム、製品・サービスプラットフォームなどを組み込んだビジネスモデルレベルでのプラットフォームを指します。ITをベースとしたものが多いですが、設計仕様、製造方式、品質、販売方法、技術、商標ライセンス、ブランドなどを対象としたものもあります。このプラットフォームがビジネスモデルとして構造的に差別化につながっているかどうかを確認します。

視点④:情報・ノウハウフィードバック

顧客やパートナー企業などから、コア技術、製品・サービス、プラットフォームやビジネスモデルそのものについて価値ある情報・ノウハウのフィードバックを受ける仕組みづくりは、ビジネスモデルの構想の中でもっとも重要な要素と言えます。事業スタート時には規模が小さく差別化要素が少なくても、強い情報・ノウハウフィードバックがあれば、指数関数的な成長が可能です。

視点⑤:収益源

製品・サービスの販売の他にどのような収益源があるかを構想します。例えば技術、商標などのライセンス料、技術指導料、プラットフォーム使用料などです。収入源の視点は、単に財務的な収益獲得だけでなく、顧客やパートナーとの関係の強化にもつながるものですから、ビジネスモデル構想上たいへん重要な意味を持ちます。

← コラム一覧へ