■仮説推論の検証というジャーニー
仮説推論の検証には、往々にして時間がかかります。また検証のたびに仮説自体も常に変わっていきます。最初は担当者の「思い」と「ちょっとした観察事実」から始まる仮説推論は、検証を重ねる中で進化・発展していくのです。
近年、スタートアップ企業で推奨されているのが、PoC(Proof of Concept=概念実証)やMVP(Minimum Viable Product)といった作業です。PoCとは、新しいアイデアや技術や方法論などが実際に機能するかどうかを検証することです。MVPとは仮説として考えた最低限の機能を持つ製品・サービスをつくり、顧客に受け入れられるかどうか検証することを指します。これらの手法も仮説検証に有効です。
仮説検証のプロセスにおいては、期待した結果がすぐに得られるとは限りませんし、時には先が見えなくなることもあります。技術マーケティング戦略における仮説検証も同様です。しかし粘り強く、かつ柔軟に取り組むことで、最終的には必ず成果が出るはずです。
山中教授とそのチームによるiPS細胞の開発研究のように、たとえ先は見えなくても毎日、何か新しい発見があるのではというワクワク感を持ち続けることが重要です。
このプロセスは、いわばジャーニー(旅)にたとえてもよいでしょう。旅が計画通りに進まなかったり、旅の行き先を変更したりすることがあるように、仮説推論も変化していきます。そのような変化自体を楽しむことがポイントなのです。

仮説検証はジャーニー(旅)である
■技術マーケティング戦略仮説のフレームワーク
■技術マーケティング戦略仮説の5つの要素
ここまで、技術マーケティング戦略とは仮説推論とその検証プロセスであると述べてきました。しかし、その内容は多面的かつ広範囲にわたるため、まず仮説を立てること自体、かなり難しい思考作業となります。
そこで、技術マーケティング戦略のフレームワークを5つの要素に分けることで仮説を立てやすくしてみました。

技術マーケティング戦略の5つの要素
各要素はこの後のコラムで詳述しますが、概要は下記の通りです。
①顧客経験価値仮説
・最終的に目指すべき顧客経験価値が明確に定義づけられている。
・目指す顧客経験価値が現在の2倍以上に設定されている(2倍以上とは、競合を圧倒するレベルの象徴として)。
・BtoBとBtoCの顧客経験価値の違いを意識し、BtoBtoCの場合はtoBとtoCの2つの顧客経験価値を構想する
②製品・サービス仮説
・製品・サービスのコンセプト、基本機能を示す
・他社との圧倒的な違い、独自性を示す
・狙った顧客経験価値が実現できるものかどうか確認する
③エコシステム・ビジネスモデル仮説
・コア技術などへ顧客からの情報・ノウハウのフィードバックが得られる仕組みになっている
・差別化された顧客経験価値を実現するためにプラットフォームが用意され、有力なパートナーが組み込まれている
・製品・サービスの販売だけでなく、複数の収益源が存在している
④バリューチェーン仮説
・バリューチェーンの成果が他社を圧倒している
・製品・サービスをつくり出すバリューチェーンの範囲が戦略的に設定されている
・バリューチェーンの中で、内製・外製が戦略的に区分けされている
⑤コア技術仮説
・自社のコア技術を特定し、その開発方向を具体的に示す
・目指すべき開発目標を可能な限り数値で設定する
・他社が模倣困難であることを重視する